みなさんこんばんは。佐藤一行です。条件付確率がなんのことかわからない人が結構います。そこで今回はそれについて高上の数学の講師が面白い記事を書いてくれました。
ぜひごらんあれ。
以下の問題を考えてみよう。
「Aさんの家庭には子供が二人いて、一方は男の子であることがわかっている。2人とも男の子である確率は?」 これはYahoo知恵袋などでもよく見かける問題です。 前提として、男と女の生まれる確率は等しいとしているとします。(でないと数学ではなく医学の領域になってしまいますので) 知恵袋では「一方が男だろうが女だろうが男と女の生まれる確率は同じだから1/2だ」とするのは間違いとされます。 正解とされる解答は「二人の子供の組み合わせは男男、男女、女男、女女の4通り。このうち問題文から女女の場合は除外され、残りの3通りのうち男男の場合なので確率は1/3。」 というものです。条件からあり得ない場合を除外するというのがミソで、これを教科書の条件つき確率の公式で解くと次のようになります。
直感と数学的確率が異なっているのが面白いですね、という話です。
おかしな点はないか?
しかし実際に知恵袋を見ると、おかしなことが起きていたりします。 はじめの問題文の最後の一文が「もう一方も男の子の確率は?」となっていたりして、それを気にせずこの面白い話を知っている人が上と同じ解説をして1/3ですと答えて終わっていたりします。 「何がおかしいの?」と思った方もいるかもしれませんが、数学の世界で「一方は」という言葉は「特定不可能だが少なくとも一方は」という意味で使います。 これにより、おかしなほうの問題文では「少なくとも一方は男です。」に対して「もう一方」というのが存在しないことになるんです。
言葉に気を付けてみる。
これをあくまで日本語的に一番自然になるように、かつ数学的に解釈すると次の問題文になります。 「Aさんの家庭には子供が二人いて、ある日偶然その家の子を見かけて男の子だった。もう一方の子も男の子である確率は?」 もう一方という表現を数学的に確実に捉えられるようにするために、「一方の子」を「特定の一方の子」にします。これで先ほどのようなおかしな問題が解消されます。 ところでこの改訂問題の答えはどうなるかというと、1/3ではありません。 これは普通に最初の「特定の子」は「もう一方の子」の性別に関係ないのでもう一方の子が男の子である確率は1/2になります。 先ほどのように条件つき確率で解こうとするとこのようになります。
条件の部分の確率が1になる(見かけた子が男の子であることが確定している)ため、条件つき確率としての意味をなしません。 「二つの問題文は同じことを言っているように見えるが何が違うんだ?」と思う方もいるかと思います。 何度も連呼していますが、その違いは「特定」です。 男の子だとわかっている子供が特定されると、残りの子供が特定され、結局その子一人について確率を考えることが可能になります。 男の子だとわかっている子供が特定されていないうちは、二人まとめて考えるしかありません。 端的に言うとこのような違いになります。
次の問題も考えてみよう。
これより少しだけ知名度の落ちる問題として次があります。 「Aさんの家庭には子供が二人いて、一方は火曜日生まれの男の子である。2人とも男の子である確率は?」 解答は以下のようになります。
一番上の問題だけ知っている人にとっては、なぜこのどうでもよさそうな情報のせいで答えが変わっていくのが全く理解できないと思います。 しかしこれまでの話から、ここから読み取れる重要な背景として、「一人の子供が完全には特定されていないが、はじめの問題よりも特定された」という点に気づけます。
特定するかしないか
このように、一方の子供の特定なしでは答が1/3だったものが、より特定されるにつれてどんどん1/2に近づいていきます。 これによって、もし何年の何月とか、もっと言うと何時何分何秒に生まれたとかいう情報をつけ足していくと、限りなく特定されていき、最終的に2問目の特定した場合と同じになって1/2になることが計算なしで予想できます。
面白いなと思ったことについてそれだけで終わるのではなく、そのバックグラウンドを理解しようとすることは少しひねられたときにも対応できる力につながりますね。
確率は本番中に検算ができないので、数学がかなり得意な生徒も含め、ときに多くの受験生を悩ませます。ただ、一つ一つの基礎的な事象をきちんと理解していけば、正答率は高まると言うもの。
こういう話もなかなか読んでいて楽しいですね。